僕の時間

読んだ本、観た映画、聴いた話。経験した時間を言葉にする練習を繰り返す日々。

不道徳教育講座

世界をどうみるかで、何者であるかが決まる。

ー The way we look at the world is the way we really are.

この台詞は、「ボブ・ディランの頭の中」(原題:Masked and Anonymous)というディラン自ら脚本を手掛け主演した異色の音楽コメディ映画のラストシーンでディラン演じる主人公のジャック・フェイトが語る中で出てくる一文です。

youtu.be

"I was always a singer and maybe no more then that. Sometimes it's not enough to know the meaning of things, sometimes we have to know what things don't mean as well. Like what does it mean to not know what the person you love is capable of? Things fall apart, especially all the neat order of rules and laws. The way we look at the world is the way we really are. See it from a fair garden and everything looks cheerful. Climb to a higher plateau and you'll see plunder and murder. Truth and beauty are in the eye of the beholder. I stopped trying to figure everything out a long time ago."

「ぼくはいつもシンガーであり、おそらくそれ以上のものではなかった。ときには、物事の意味を知るだけでは充分と言えない。ときには、物事が意味しないことをも知らなければならない。たとえば、愛する人のできることを知らないということが何を意味するのかといったことだ。すべてのものは崩壊した。とくに法や規則がつくる秩序は崩壊した。世界をどう見るかで、ぼくたちが何者であるかが決まる。祭の遊園地から見れば、何もかもが楽しく見える。高い山に登れば、略奪と殺人が見える。真実と美は、それを見る者の目に宿る。ぼくはもうずっと前に、答えを探すことをやめてしまった」

 

 僕はこの台詞が好きです。今回紹介するのは、なんとなくこんなことを僕は思い浮かべる1冊です。

 

不道徳教育講座

三島由紀夫
1967年1月20日第1冊発行
1999年4月20日改版第1冊発行
出版所:角川書店

https://instagram.com/p/9ycbr9E7M0/

13 #bokunojikan

 

 三島由紀夫が書いたエッセイです。以前紹介した「ヨーロッパ退屈日記」は1963年『洋酒天国』1月号が初出あり、一方「不道徳教育講座」は1958年雑誌『週刊明星』7月27日発売の創刊号は初出あるらしいので、少し三島が先ということでしょうか。しかし、いま風のエッセイが本格的に確立したのはこの時期なのでしょうか。

 どちらもエッセイですが、作風は待ったことなっています。伊丹は気取りかたを講じていますが、三島はひねくれた態度でジョークを持ちかけてくる、そんな印象を僕は受けました。

 しかし、共通している部分があるようにも感じました。

 ただ、二人とも自殺してしまっているというのが、なんというか、一番ジョークだと言って欲しいことであります。

 

 

不道徳教育講座 (角川文庫)

不道徳教育講座 (角川文庫)