月と六ペンス
英米の骨太な作家の作品群をもっともっと触れていきたいという欲望が最近強まってきています。
そんなことを思っているときに、雑誌MONKEYのvol.7、特集「古典復活」で村上さんとの柴田さんの対談が乗っていて、とても魅力的に「古典」作品の入り口を提示してくださっているのを読みました。今、僕たちが尊敬し、触れ親しんでいる最前線で活躍する作家さん方が若き頃に触れてきた作品というのは、僕たち世代に取ってもやはりルーツであるし、廃れることのない魅力があるように感じるのです。
ですから、これを参考にしつつ、少しづつかいつまんで作品を読んで、取り上げていければなと思っています。
The Moon and Sixpence
サマセット・モーム William Somerset Maugham
1919年
月と六ペンス
StarClassics名作新訳コレクション
訳者:金原瑞人
2014年4月1日第1刷発行
発行所:新潮社
サマセット・モームはイギリスの小説家で、長年諜報活動を行っていたという異色の経歴をもちます。昔は英文和訳の参考書とかに多く載っていたとか。平明な文体と巧妙な筋書が特徴の作家と言われています。
モーム初めに選んだのには特に意味はないのです。ただなんとなく、新訳バージョンのデザインに惹かれたからです。青と黄色のシンプルな色使いが特徴的です。黄色で描かれた中央部の最上段のマークと、タイトルを囲む記号?には何か意味があるのでしょうか。すみません、少し調べましたがわからなかったです。
内容ですが、人間の矛盾、人間の原始的な欲求といった主題を、「私」である作家と「ストリックランド」や「ストルーヴェ」などの画家という「文化」や「芸術」に生きる人を焦点にあてることで解き明かそうとしているように、僕は感じました。
それを簡潔で平易な文で書いてるところがモームの凄さなのではないでしょうか。
人間というものがどれだけ多くの矛盾を抱えているか知らなかったのだ。(中略)狭量と気高さ、悪意と慈悲、憎悪と愛、それらはみな、ひとりの人間の心の中に共存している。<P99/L6>
人生にロマンスを見出すには、役者の素養がなくてはならない。一歩引いて自分の行動をながめる能力が必要だ。好奇心を持って、遠からず近からずの距離から。<P263/L12>
という文章なんか、なんとも鋭く言い得て妙だと感じました。
随所に、イギリス人の皮肉を楽しめるのもこの本の面白さでしょうか。他のイギリス文学作品も多く読んで、ウィットに富んだ人物となりたいものです。
- 作者: サマセットモーム,William Somerset Maugham,金原瑞人
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/03/28
- メディア: 文庫
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