ソラリス
僕はこの作品を安易な気持ちで手に取ってしまいました。
「SF」というジャンルに属する小説の中では非常に評価の高い、SF史上としての名著くらいの気持ちです。
しかし、それは僕の「SF」に対する考えがあまりにも狭義であったということを思い知らされた、そんな1冊です。
ソラリス SOLARIS
スタニスワフ・レム Stanisław Lem
1961年発行
訳者:沼野充義
2015年4月15日第1刷発行
(2004年9月国書刊行会から単行本として刊行された作品を文庫化したもの)
発行所:早川書房
作者のスタニスワフ・レムは旧ポーランド領ルヴフ出身の作家であり、SFの第一人者や、20世紀世界文学史上の巨人の一人に数えられるほどに有名な方です。オフィシャルサイトがありましたので、一応載せておきます。
そんなことを知らずに読み進めたのですが、すぐに普通じゃないぞと感じました。
フィクションを描くとき、特に「SF」を描く際には詳細にリアリズムが見出せれることが大切であるとよく言われると思います。この作品においてそのリアリズムとは「ソラリス学」と呼ばれる本の中で扱われる学問で特に色濃く示されています。その濃さと巨視的思考の数々に圧倒されました。
少し「ソラリス学」について説明すると、それは人智を超えた存在と遭遇した際に生じる思考実験です。あとがきにある、ポーランドの文学研究者、イェジイ・ヤジェンプスキの言葉を借りれば、それは
存在論的論考であり、科学についてのーその限界と可能性を論ずるー言わばメタ科学小説でもあり、人間の意識をめぐるデカルト的寓話でもあり、神をめぐる形而上学的小説であり、そして最後に<コンタクト>をめぐる典型的なSF小説でもある
ということになるのでしょう。
僕があまり言及するには「ソラリス」は複雑であり、多様性をもち、多様な解釈が可能な古典作品であるということです。
ですから僕が感じたことだけを簡潔に述べるとすると、「SF」とは多くの日本人がもつイメージよりも重厚で、深みがあり、面白いものだということが知れる1冊だということです。