僕の時間

読んだ本、観た映画、聴いた話。経験した時間を言葉にする練習を繰り返す日々。

火山のふもとで

 僕が初めて松家先生と会ったのは、大学一年生の春、右も左もわからずにとった「メディアの変遷と未来」という講義であり、先生は講師という立場で壇上に立っていたときになります。今思えば、それはまさに、「新潮」で「火山のふもとで」が発表される直前ですから、色々と準備をされていたころだったということになるのでしょう。

 松家先生のことを知らなかった僕は、そんな事情を知る由もなかったのですが、ゆっくりと丁寧に一つ一つ選んで話される姿や、講義で映しだされるスライドがシンプルで雑味のない感じをうけ、不思議と心がとても惹かれたことを覚えています。一回も出席を取らない授業であったのですが、毎回の授業に多くの生徒が先生の言葉に静かに耳を傾けていて、私自身一回も休むことなく出席した講義でした。

 そんな魅力のある先生が書かれた1冊を今回紹介したいと思います。

 

火山のふもとで

松家仁之
初出「新潮」2012年7月号
2012年9月30日第1刷発行
発行所:新潮社

https://instagram.com/p/9dq671E7C5/

7 #bokunojikan

 

 後になって、松家先生は長年「考える人」の編集長をなさっていたことや、小説を書いていたことを知りこの本を手に取ったのですが、初めて会ったときの印象や、講義の印象とは全く違う一面をこの本を介して知ることができたような気がしています。

 ですが、豊かな自然や、建築美学、図書館設計というテーマから時々覗きみえる本に対する愛情といったものは、まさに先生の積み重ねてきた時間でそのものであり、先生の凄みを感じずにはいられませんでした。それは講義でも感じていた類のものでありました。そして改めて、それらをとても丁寧にしなやかな文体で優しく語っているところに先生の人柄や、文化に対する愛情が感じ取れたような、そんな気がしています。

 僕自身、建築には興味はなかったのですが登場する建築家の名前や場所を検索したりして、あるいみ雑誌てきな文化との「出会い」もできると思います。

 場面が色彩を帯びて、匂いや、空気の温度まで想像できるとても幸せな小説体験のできる1冊です。

 

 松家先生については、まだまだゆっくり語りたいのですが、今日はここら辺で。

 

p.s. 風邪をひいてしまい一日休んでしまいました。。。一日やらないだけで、なんとなく億劫になってしまいましたが、なんとか踏ん張って引き続き頑張りたいと思います。

 

 

火山のふもとで

火山のふもとで